2017年10月13日

客商売という姿勢


カープを応援するようになったきっかけは、2015年の黒田博樹さん(以後、「黒田」と書かせていただきます)の日本球界復帰でした。

黒田の1冊目の本、『決めて断つ』(ベストセラーズ)。



初めて読んだのは、まだ黒田がメジャーリーグに在籍していた2013年でしたが、年に一度は取り出して読みたくなる本です。
(初版は2012年。2015年に、新しいプロローグと第8章「復帰」が加わった文庫版が新たに出ました)

中でもとりわけ好きなひとつが、お客さんについて語ったこんな話。

子どものころ、野球を見に行って、応援していたチームが勝つと、「きっと今日の試合は、僕が見に来たから勝ってくれたんだ」と、ものすごく嬉しかったこと。この経験が、自分のマウンドにおける姿勢の原体験となっている。選手にとってはシーズンのうちの一試合にすぎないかもしれないけれど、球場に来てくれたファンにとっては、思い出に残る大切な一試合かもしれない。

黒田のプロとしての立ち居振る舞いの、土台の一つになっている感覚なのだと思います。

以前、出版社で仕事していたとき、お客さまから直接いただいた注文品を発送することもありました。発送する側からすると、何品かあるうちの一つかもしれないけれど、受けとるお客さまにとっては、大切なひとつの梱包品。
そういう意識で作業をする(できる)かどうかで、同じ仕事をしていても大きな違いが生まれてくると日々感じていました。



「昨年、25年ぶりにリーグ優勝して、本当に広島のファンの方が心から喜んでいただいて、そしてあの優勝パレードでファンの方と、そして、選手が素晴らしい時間を過ごした、あの時をもう一度、今シーズン味わいたいと思って、選手は本当にキャンプから頑張ってくれました」

9月18日、リーグ優勝を決めた日の、緒方孝市監督のこの言葉は、ファンを大切に感じている気持ちが伝わってきて、とりわけ心に残りました。その翌日、緒方監督についてのこんな記事を見つけ、得心しました。

佐賀県鳥栖市の実家は魚市場を経営。小・中学生の頃は日曜日に手伝った。お客さんと触れ合った原風景は脳裏に残り、「ファンの思いに応えるのがプロ野球選手の宿命」と胸に刻んだ。
(『スポニチ』2017年9月19日)

見る(サービスを受ける)側の立場に立てること。どんな種類の仕事でも、その姿勢があるかないかは、確実に見ている人に伝わると思う。黒田の言葉と重なってゴンゴラゴンゴラ響いたのでした。



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