10月24日、DeNA戦(横浜スタジアム)。2対1で、森下暢仁9勝目。
2016年のリーグ優勝が決まった試合のときのように、余韻の残る、何度でも見たくなる試合だった。お金を払ってでも見たい、お金を払って見る価値ある試合だと思った。
森下は9回135球を投げた。カープの試合を見ていない人たちからすれば、森下を完投させたことを酷使とか、昭和の野球だとか、佐々岡監督は自分が丈夫だったからだとか、言うでしょう。
でも、カープファンは知っている。そういうことじゃないんだと。
1週間前、10月17日の中日戦。好投していた森下を7回で交代させ、後続が打たれ、負けた試合の悔いが佐々岡監督にも大きく残っていたんだと。
試合は3回、堂林翔太の悪送球がきっかけで、横浜に1点先制される。
前日も、2失策していた堂林。この日は梶谷隆幸の打球をキャッチして、珍しくバウンド送球でなくダイレクトに送球。ちょっとそれたところか、思いっきりそれた。もう降板させてほしいと思った。
打線は5回、鈴木誠也のタイムリーで同点に。しかし、その後は無得点。
7回裏、援護がない中でも、森下の球は衰えず、三者凡退。
8回、試合が動いた。菊池涼介がヒットで出塁。打席には森下。
平田真吾がバッターに集中しすぎていたのか、その隙をうまくついて菊池が盗塁。平田は捕手の戸柱恭孝に指を差して指摘されるまで気づかない始末。
菊池、グッジョブ。この2塁進塁が大きかった。
代打を出さずに森下に託したわけだが、森下の打席にというより、森下の次の投球に託した意味合いの方が大きかったと思う。
ところが、森下、レフト方向にヒットを放って、菊池が生還。森下に向かって拳を突き上げる菊池、両手をあげてガッツポーズをする森下。
森下がこんなふうにガッツポーズするのは初めて見たかも? いやぁ、しびれました。
8回表で1点リード。すでに111球投げている森下。でも、ここでも続投。三者凡退。代打の佐野恵太と梶谷が初級打ちしてくれたことも幸いして、球数少なめで済んだ。
ベンチに戻ると、佐々岡監督がやってきて、何か話しこんでる。交代だったら、ここで監督は「お疲れさま」の握手をするところ。しかし、その気配はない。
あれ、森下、ウィンドウブレーカーをはおった。どっちなんだ? でもまだベンチにとどまっている。
バッテリーを組む坂倉将吾とも何か話している。これはやはり続投か? あ。キャッチボールを始めました。
1週間前、何も聞かず「お疲れ様」とねぎらいに言った佐々岡監督。あのとき、森下に「次も行くか? 行けるか?」と一言聞いてくれたらと何度思っただろう。佐々岡監督も悔いが残っていたはずだ。
佐々岡監督はあのとき学んだのだろう。そして森下の気持ちを聞いてくれたのだろう。佐々岡監督にも学習能力が残っていたようで、よかった。
9回表、三好匠がフォア、西川龍馬がヒット(代走・大盛穂、いい顔してるな~)、ピレラもフォア(代走・野間峻祥、とびだしとかヘマするんじゃないよ)で満塁。
打席には、満塁での打率0.833という坂倉。ここで女房役が森下をラクに! と、ドラマチックなことは起こらず、打ち取られる。
9回裏、乙坂智のゴロを菊池がとって1アウト。ロペスのゴロを三好がとって2アウト。この安定感、とてつもなくいいです。
(打席の途中、ファウル球を追いかけに行った坂倉のヘルメットを拾って差し出す優しいロベス。ルナを思い出す。ところでロペス、この日、日米通算2000本安打を達成。尊敬しています。こんな選手、カープにもほしい)。
100球を超えても、あくまでも自分の間をもつ森下。立派。
3人目のオースティンがレフトにヒット。ところが、野間が絶妙のポジションでクッション処理をして2塁に好送球。2塁に向かったオースティンが飛び技繰り出すも、逃さず菊池がタッチ。野間、グッジョブ!(代走のときヘマすんなとか言ってごめんね)
森下の晴れやかな顔。もうパ~ッとね、花が咲いたよう。チームメイトもいい顔してた。野間も。いい光景でした。
ヒーローインタビューでも、「とにかく勝ちたいという気持ちが強かった」「残り試合も負けないように勝っていきたいと思います」と、森下。
今のカープで、こうもはっきり「勝ちたい」「負けたくない」と口にする選手はいるだろうか?
一流の負けず嫌いさは半端なものじゃないのだ。森下は黒田博樹と接点はないかもしれないが、黒田魂の継承者は森下だと思った。
そのプレーを見せることでチームのレベルを引き上げる存在になれるところも、黒田と重なる。
勝つことを渇望していないように見える今のチームの空気をこの試合では払拭した(次の試合はわからないが)。
完投させたことを非難する声もあるかもしれない。しかし、監督は、続投するかどうか選手とのコミュニケーションをとった。森下は監督の行動を変えた。
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