一昨年、黒田博樹が引退したとき、生涯、あれほど濃密にプロ野球を見ることはもうないでしょう。とまで思ったものでした。
そんな気持ちで迎えた昨年のキャンプイン。忘れられない記事があります。
権藤博さんが、広島のキャンプを訪ねたときのことを『日本経済新聞』のスポーツ欄で連載しているコラム(2017年2月16日)に、こんなふうに書かれていました。
「広島のブルペンは静かで、みんな黙々と投げていた。投げ損なったときに思わず声をあげる投手がいるものだが、野村祐輔ら広島の投手はよくても悪くても、表情を変えなかった。弱い犬がキャンキャンほえるのと違って、どっしりしている。心の中ですでに打者との戦いに集中しているから、余計な声も出ないのだろう」
「黒田は口でどうこう言うのでなく、背中で後輩たちに打者との戦い方を教えてきた。抑えた、打たれたという結果は別として、一球に一喜一憂せず、ひらすら攻め続けること。投手として一番大事なものが、広島のブルペンにあった。黒田はまだそこにいる、と私は感じた」
黒田はまだそこにいる……何度読み返しても、しびれます。
マウンド上の野村や薮田和樹からも、野手の選手からも、プレーや言動を通して、黒田を感じた2017年でした。
黒田はたくさんのものを私に(私たちファンに)残していってくれました。でも、それは思い出とか、なつかしくなる昔話だとも思っていません。今もどっこい生きてる。
選手たちはどんな景色を見せてくれるでしょうか。
パッパラ〜(幕開けラッパの音)。
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