その中でも、とくに印象的だったのが、「鈍感になるのも必要」という話。
「(アメリカでは)たとえば時差があって、いつもと起きる時間がずれたとき、神経質になり過ぎると、ストレスを感じ、普段通りできない部分がでてくる。時の流れに任せて、あえて鈍感にやった方がいいなと思ってました」
「食事も普通なら登板前日は炭水化物をとる、栄養バランスを考える、となるけど、アメリカでは日本食レストランがないところもある。〈これを食べないといけない〉って考えたらストレスの一つになってくる。(略)だから、サバイバル力というか、そういうものは身についてますね」
対照的だったのが、黒田と同世代で、メジャーも経験した松井稼頭央。2015年、松井が2000本安打を達成したとき、こんな新聞記事を読んだことがあります。アメリカで生活していたとき、食事にも気を配って、日本食が手に入る店をなんとか探し出していた……というものでした。
東京とミラノを拠点として活躍しているデザイナーの佐藤オオキさんは、「物にできるだけこだわりを持たない」よう気をつけているそうです。デザイナーというと、こだわりのものを大切にしている人が多いイメージがありますが。
たとえば、このペンでないと、このメモ帳の質感でないと、いいアイデアが浮かばない……仕事道具にそうしたこだわりが増えると、いざそれがない環境になったとき、集中力を発揮できなくなってしまいかねない。決まったペンやメモ帳がなくても、いつでもいいアイデアが浮かぶようにしておいた方がいいと言うのです。(『400のプロジェクトを同時に進める 佐藤オオキのスピード仕事術』より)
佐藤さんは、1ヵ月のうち半分を海外出張で過ごすという生活を通して、自分の思い通りの環境が整っていない場所でもフラットに生活する方法、こだわりを捨てる術を経験上身につけていったと思うのです。
こだわりが強さを生むこともあるかもしれないけれど、こだわりを捨てるのは、大きな強さになると感じたのでした。
スポンサーリンク
〔関連記事〕
●客商売という姿勢
●広島テレビのアナウンサーが追い続けた黒田博樹