2021年11月28日

山本由伸すごかった、大谷翔平みたいだった


2021年のプロ野球が幕を閉じた。

11月27日、2021日本シリーズ、オリックス・ヤクルト第6戦(ほっともっとフィールド神戸)。1対2で、ヤクルトが覇者に。

すごかった。第5戦まで、1点差が4試合、2点差が1試合。最後の最後は、12回延長、1点差で決着がついた。

試合開始から吐く息が白かった。よりによって気温7℃の球場で、23時過ぎまで続いたゲーム。延長に入った頃か、CMがいっさい入らず、試合の緊迫感がより味わえた。TBSもえらかった。


山本由伸が9回141球を投げきった。8回、三者連続三振、126球でベンチに戻ったとき、高山投手コーチと「お疲れさま」の握手。

これで交代かと思いきや、その握手がずいぶん長い。そのあとも中嶋監督と何か話してる。そうしたら、ベンチ前でキャッチボールを始めた。きっと、自ら申し出たんだと思った。

9回を三者凡退に打ちとって、やりきった表情でマウンドを降りる山本。この力投に、野手は何としてでも応えないと。

だったのだが、9回ウラからヒットすら出ない。延長戦、モヤもジョーンズも、もういない。


山本の投球に引き寄せられるように、オリックスのリリーフ陣にも気迫が。

10回は平野佳寿が押さえ、11回には能見篤史がワンポイントで村上宗隆を打ち取り、比嘉幹貴が受け継ぐ。12回の富山凌雅も気迫がこもってた。2アウトとり、このまま行くのかと思えば、吉田凌に代えてきた。

川端慎吾の打席でパスボールが出て、塩見泰隆が2塁に進塁したのは痛かった。坂倉将吾には捕手をやらせてあげたいけれど、やっぱり任せるのは難しいとも思った。

第5戦で、オリックスの代打の切り札・ジョーンズが逆転ホームランでとどめを刺し、第6戦では、ヤクルトの代打の切り札・川端が決定打を放った。


オリックスのリリーフ陣の気迫もだったが、ヤクルトのリリーフ陣とヤクルトベンチの気迫はさらにすごかった。

スアレス、清水昇、マクガフが回またぎ。普通なら失点の香りがするシチュエーションで、オール無失点。

オリックスがこんなに打てないとは。たとえば、山本が完封したとしても、点を取らないと勝てない。


勝てなかったけれど、山本は素晴らしかった。

9回になっても投球の質が落ちない体の強さと技術の高さもさながら、6回、宗佑麿と紅林弘太郎が続けてエラーをして、ノーアウト1塁2塁になったとき、両手で「大丈夫、大丈夫」のしぐさ。結局、無失点に押さえ、若手のエラーをカバー。

このとき、解説の新井貴浩さんの言葉の使い方がまた素敵だった。若手が守備で山本の足をひっぱった、なんて言い方はせずに、「守備で山本投手に負担をかけた」と咄嗟に言葉を選んでいて、エレガントだった。

このエラーを取り返すべく、若い二人にはバットで見せてほしかったんだけど。


それでも山本、ベンチに下がっても、ベンチ前で応援。味方の打撃に反応して、ずっと笑顔が見えた。さすがに川端に点を取られたとき、スッと真顔になったけど。

こんなに体を張って、いいピッチングをしても、ここまで味方が点を取れないのでは。それなのに山本には悲壮感がない。野球を心底楽しんでいるように見えた。別次元。大谷翔平みたいだった。そうしたら、試合後、「本当に楽しかった」と語っていた。(「日刊スポーツ」)

今シーズン、打線の援護なく勝ちがつかなかったときの森下暢仁には悲壮感があった(昨年はなかった)。

接戦=オリックスが打てなかった結果に終わったけれど、山本の投球と、マウンドとベンチでの振る舞いは、鮮烈だった。
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