2021年1月28日

オリンピックが浮いていく


1月25日、マツダスタジアムに隣接された屋内練習場での自主トレを公開した鈴木誠也。

夏のオリンピック開催について、「僕たちが決められることではないが、選手としては、やりたい気持ちは強い」と語っていた。

その一方で、「世界の人たちが来ると余計に広まるかもしれない。また大変なことになれば、周りが余計に苦しむだけ。流れに任せるしかない」とも答えていた。(「朝日新聞デジタル」)

状況をフラットにとらえている答えにホッとした気持ちになった。

プロ野球選手はペナントレースが主戦場。オリンピック出場を一番の目的としてきたアマのアスリート(スポンサーのついている選手もいますが)とは、少し立ち位置が違うかもしれない。


体操の内村航平は「日本の国民の皆さんの〈オリンピックはできない〉という思いが80%を超えている。できないじゃなくて、どうやったらできるかを皆さんで考えて、どうにかできるようにしてほしい」と語っている。(「日テレNEWS24」)

オリンピック目指してやってきたアスリートのことを思うと、「オリンピック開催は反対」と声高に言えない空気がある。できることなら出場できるよう応援したい。

それでも、新型コロナで生活が一変して、日々の食事にも困っている人や、大きな負荷がかかっている医療従事者のことを考えると、オリンピックに諸手を挙げて賛成なんて、言えない。

「オリンピックでメダルがとれたら死んでもいい」という世界があると聞いたことがある。トップアスリートにとっては切実な想いがある特別な世界かもしれません。

そう感じることは自由。でも、自分を特別視し過ぎないよう用心した方がいいとも思う。


1月18日から始まった通常国会で、菅首相は「人類が新型コロナに打ち勝った証しとして、世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意の下、準備を進める」と演説した。

相変わらず「やるやる」と言い続けています。裏事情があって、引くに引けない状況なんだろうけど。

オリンピックをゴリ押しして多大な税金を使う前に、ほかにもやることいっぱいあるのに。

しかも、新型コロナは世界中に広がっている。日本の感染状況だけの問題じゃない。

もし、たとえばドイツがオリンピック開催地だったら、メルケル首相はどんな判断を下すんだろう、と思ったりする。

少なくとも、この状況で、「何が何でもやる」なんて、竹槍をつきあげるようなことは言わない気がする。


菅首相の「人類が新型コロナに打ち勝った証しとして」という言葉を聞いて、昨年3月、柔道家でJOC理事の山口香さんも、そう語っていたことを思い出した。

新型コロナの感染者が増えてきた当時、政府やオリンピック関係者の間で、「中止」や「延期」と言えない空気があった中、ハッキリとオリンピック延期の考えを示し、発信していた山口さん。ブログの記事にもしたことがあります。

その言葉は力強くて、希望を感じさせるものだった。

しかし、山口さんも、現在の感染拡大状況を見て、「絶対にやる」という政府やオリンピック関係者の姿勢に違和感を覚えているという。(「朝日新聞デジタル」「毎日新聞」)

ここでもまた、鈴木誠也の言葉を聞いたときのように、ホッとした。

一度決めたことを押し通すのだけが勇気じゃない。もう一つの選択肢を用意する大切さをどうにかわかってもらえないものか。

プロ野球なら、「勝てたらいい」より「絶対勝つ」という気持ちで臨んだ方がいいと思うが、それとこれとはちがーう。


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